基底
基底とは
ベクトル空間には様々なものがありますが、基底を使うとベクトル空間の元を座標を使って表現することが出来ます。今扱いたいベクトル空間と数ベクトル空間との一対一対応を与えることを考えます。それによって、数の並べたものであり計算がしやすい数ベクトル空間を扱うことで一般のベクトル空間を扱うことが出来るのです。
まずは多項式空間で考えてみる
いきなり一般論を説明しても理解するのは大変ですので、まずは具体例から考えてみましょう。
2次以下の多項式全体を
とします。すなわち、
です。これは、実数係数のベクトル空間となっています。
数ベクトル空間
と、この
とを一対一対応させることを考えます。
例えば
と
を、
と
を、
と
とを対応させます。
このとき、
は
に、
は
に、
は
に
対応することが直感的に理解できると思います。
このような対応関係を考えることで多項式がシンプルな数の列で表せます。
また、表せるだけでなく足し算や実数倍といった計算もすることが出来ます。
例えば
ですがこれは
と計算することが出来ます。
このように数ベクトル空間と一般のベクトル空間の対応関係を考えることで一般のベクトル空間を扱いやすくすることが基底の考え方なのです。
基底は「全単射な線形写像
」によって表される
今扱いたいベクトル空間をVとします。基底をとるということは数ベクトル空間
とベクトル空間Vとの一対一対応を考えるということでした。一対一対応を与えるのは全単射な写像です。さらに、その写像に線形性があると和やスカラー倍といった演算も含めて対応させることができ、非常に便利です。したがって、全単射な線形写像
を考えます。そしてそのような写像を与えることが基底を与えるということに他なりません。また、全単射な線形写像
が存在するとき、Vをn次元ベクトル空間と呼びます。
線形写像
の表し方
基底をとるには
からVへの線形写像を与えれば良いことが分かりました。よって、
の表し方を考えましょう。
には標準的な基底
が定まっています。したがって、この
の行き先
を与えてやると、線形写像
が一意に決まります。実際、
としてやると、線形写像の性質より
となります。
よって
の行き先
を横に並べた
によって線形写像
を表すことができます。また、
の右側に
を書くことで
を表します。すなわち、
です。
例 多項式空間
ここで再び、2次以下の多項式全体の空間
に登場してもらいましょう。先程の対応を線形写像
を使って表すと、
となります。よって写像
は、それらを横に並べた
で表すことが出来ます。これによって例えば
と
を計算することができます。
ちなみに、
との全単射な写像
が存在することが分かったので
は3次元だといえます。
基底の定義
ベクトル空間の基底とは、線形写像
が全単射のとき
の行き先
の集合
のことです。
なんだか教科書に書いてある定義と違うぞ?と思った方も多いと思います。たしかにこの定義は一般的な教科書に書いてあるものと見かけは違います。しかし、この定義は一般的な定義と同値になります。そして、一般的な定義よりもこちらの方が基底を理解するには分かりやすいと考えたためこちらを採用しました。一般的な定義との関連を知りたい方は「基底についてもっと詳しく」をご覧ください。
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