行列
数が長方形状に並んだ行列。線形代数で出てきますが、その意味については特に触れられずただ計算方法だけを学ぶことが多いように思います。今回はその行列の意味について解説します。ご期待ください!
行列とは
ベクトル空間の重要な例として数をいくつか並べたものである数ベクトル空間
というものがありました。行列とは、その数ベクトル空間のあいだの線形写像を表したものです。
線形写像というのは
という2つの性質を持つ写像のことでした。実はこの性質があるため、線形写像のいくつかの行き先を決めてやるとその写像の全ての行き先が決まってしまいます。したがって、その「いくつかの行き先」を横に並べて書けばその線形写像がどういうものか全て分かってしまうのです。そしてそう、それこそが行列なのです。
標準基底登場!
ところで「いくつかの行き先」とありましたが、具体的にいくつなのでしょう。その答えは定義域の次元です。定義域の次元の数だけ行き先を決めてやればよいのです。
例として定義域を
、値域を
とした線形写像
を考えてみましょう。すなわち
です。定義域
の次元は3であるので3つの行き先を決めれば良いことが分かります。でも、どこの行き先を決めれば良いのでしょう。そうです、行くもとは何でも良いわけではありません。うまくいかない組み合わせもあります。ここで、
には都合のいいものがあります。
です。これを
の標準基底といい、
とおきます。これらの行き先を決めてしまえば
を定義域とする線形写像は一意に決まります。
例えば、
としましょう。これによって3つの行き先は決まりましたが残りの行き先はどうやって決まるのでしょう。例えば
はどうでしょうか。
ここで、数ベクトル空間の和の法則を使うと
と分解できます。さらにスカラー倍の性質を使うと
となります。よって
ここで線形写像の和の性質より
さらにスカラー倍の性質より
これで
の行き先が
と分かりました。
これで、なぜ3つの行き先を決めれば良いのか分かっていただけたと思います。
よってこの3つの行き先を横に並べた
今回の場合は
が行列と呼ばれるものです。
行列を用いると
の行き先は
と簡単に計算できます。
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