複素数の行列表現
複素数
は和と実数倍を自然に定めることで実数
上のベクトル空間とみなすことができます。そこで今回は表現行列の例として、複素数の積の表現行列を求めてみましょう。
複素数の積を写像とみなす
ある複素数
を取ります。そのとき、任意の複素数
に
をかける写像
、すなわち
を考えると、これは
上の線形写像となっています。そこで、この線形写像を行列で表現することを考えます。
複素数の基底をとる
線形写像を行列で表現するには基底を取らなければなりません。そこで基底を与える写像
を
とします。この写像によって
と
の一対一対応が取れるので複素数
を実数
上のベクトル空間とみなしたとき複素数
は2次元であるということが分かります。(ちなみにガウス平面、または複素数平面と呼ばれるものはこの対応関係を使って複素数を2次元である平面と対応させたものです。)
複素数の積の表現行列
複素数
の基底が決まったところで、いよいよ先ほどの写像の表現行列を求めていきます。表現行列を求めるには
を表す行列を考えればよいのでした。
すなわち、標準基底
の
による行き先を調べ、それを並べればOKです。
となるのでそれを横に並べた
が
を表した行列、すなわち
の表現行列です。
複素数の行列表現
ところで、行列には和と積が定義されていました。これによってこの写像の和と積を表現することが出来ます。これを複素数の行列表現といいます。すなわち、
と
を対応させることによって、実数を成分とする行列を計算することで複素数の計算が出来てしまうのです。
たった2次の実行列でも複素数の計算を内部に含むほど奥が深いのです。
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