写像
線形代数は、線形性という性質を持つ写像について考える学問のことでした。今回はその写像について説明します。
写像とは
写像というのは簡単に言うと関数のようなものです。ただ高校で扱う関数よりもっと一般的なものです。高校では、1つの実数 が与えられた時にそれに対応する実数 を決めるような対応関係 のことを関数と呼びました。高校では や は実数でしたが、一般には実数だけでなく様々な集合を考えることができます。そうすることで様々な対応関係を写像と捉えることができるのです。
いま、 を集合とします。 の要素を一つ決めると、 の要素が一つ決まるような対応関係 を写像といい、 と書きます。
集合
集合について少し補足をしておきます。写像の定義域と値域は集合で与えられるとのことでした。現代数学のほとんどは、この集合と写像の言葉で書かれています。高校では、確率を求めるときなどに「100本のうちあたりが3本入っている集合」などを考えますが、集合論で本来考えたいのは、「整数の集合」や「実数の集合」、「二次多項式全体の集合」のようなものです。その集合に不等号関係や、距離関係や演算法則などの構造を与え、その集合や集合間の写像の性質を調べるというのが現代的な数学の手法です。
一般的な記号として
自然数:
整 数 :
有理数:
実 数 :
複素数:
があります。
これを用いると
「
が実数である」ということは
「
が実数の集合に属している」
すなわち
「
」
と書くことが出来ます。集合に属しているもののことを要素といったり元(げん)といったりします。
ここで2つほど写像の例を挙げましょう。
例1.
とします。 の要素が1つ決まると、 の要素が1つ決まれば良いのですから、 などと を定めてやれば は写像となります。ここで、 の要素が余っても良いということに注意してください。また のように の異なる要素に対して の同じ要素を定めても問題ありません。
例2.
高校でやった関数も写像です。実数全体の集合は普通と書くので、例えばは実数から実数への写像となります。ここで注意したいのはは写像ではないということです。というのは、実数の中で考えると負の実数のルートが定義されていないからです。実数の中でこの対応を考えたいときは定義域を非負の実数に制限してとすれば写像となります。
今回のまとめ
- 写像とは の要素を1つ決めると の要素が1つ決まるような対応関係のことである。
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