行列の積
行列の和や差に比べて、行列の積というのはとても複雑です。なぜこのような複雑な定義をするのだろうと不思議に思った方も多いと思います。 今回はその行列の積の謎に迫ります。果たして行列の積の意味とは...?
行列の積とは
行列とは数ベクトル空間のあいだの線形写像を表したもののことでした。その行列の積とはいったい何なのでしょうか。 その答えは写像の合成にあります。2つの線形写像の合成写像をとることこそが行列の積を表しているのです。
すなわち、2つの線形写像
の合成写像
を表した行列が
を表した行列と
を表した行列の積なのです。
これも先ほどの行列の和のときと同様に
の場合で考えてみましょう。
とおきます。
も線形写像となるので定義域の標準基底
の行き先が分かれば
の全ての行き先が分かります。(詳しくは「行列とは」をご覧ください。)
写像の合成の定義より
同様にして
これらを横に並べれば
となります。したがって、行列の積は
となることが分かりました。
次のページでは線形写像を使って一般のベクトル空間をエレガントに表し、計算する方法を説明します。
今回のまとめ
- 行列の積とは線型写像の合成を表したものである。
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