隣接三項間漸化式と行列
高校数学において、数列と漸化式というものを扱います。そこで、隣接三項間漸化式が出てくるのですがその一般項の求め方が技巧的でなかなか大変です。 今回は、その隣接三項間漸化式の一般項が行列によっていとも簡単に分かってしまうところをご紹介します。
隣接三項間漸化式を行列で表現する
まず、隣接三項間漸化式とは、次のような漸化式のことでした。
この漸化式を写像として扱うにはどうしたら良いでしょうか。
いまここで、
は
と
の2つの要因によっていることに注目してください。
よって、定義域を
とすればこの漸化式を写像として扱えそうです。
そうすると値域に関してはどうすればよいでしょうか。漸化式というのは繰り返し写像で送ることで数列を定義していきますから、値域も定義域と同じになっていないといけません。 よって値域も とします。
以上を踏まえると、
として
のように送る写像を考えるとよさそうです。
実際、隣接三項間漸化式は
と行列を使って表すことが出来ます。
隣接三項間漸化式の一般項の求め方
先ほどの行列の式から帰納的に
であることが分かります。
さらに、ここで基底の変換を使って行列をジョルダン標準型に直します。 そうすることで行列のn乗が簡単に計算でき、数列の一般項が求まります。
フィボナッチ数列の一般項を行列で求める
隣接三項間の漸化式で求まる数列として有名なものにフィボナッチ数列があります。 例としてこのフィボナッチ数列の一般項を行列で求めてみましょう。
フィボナッチ数列とは以下の漸化式で定まる数列である:
これを行列の形にすると
となります。したがって帰納的に
であることが分かります。
ここで
とおき、
のジョルダン標準形を求めます。
固有方程式は
であり、判別式
であることから固有値は2つあり、対角化可能です。
2つの固有値を
とおき、これらの固有ベクトルを求めます。
まず
の固有ベクトルですが、ここでケイリーハミルトンの定理より
です。よって
より(
でも可)、
が
の固有ベクトルのひとつと分かります。
同様にして
が
の固有ベクトルのひとつです。
したがって
とおけば
が成り立ちます。
よって
ここで
解と係数の関係より
であるから
したがってフィボナッチ数列の一般項は
と求められました。∎