rankとは

rankの意味・求め方について解説します

rankとは

$ {\rm rank} f$ とは線形写像$f$の像空間の次元のことです。

数式で書くと $$ {\rm rank }f:={\rm dim \ Im}f $$ となります。

行列のランクは、その行列を左からかける写像のランクとなります。

なぜrankを調べるのか

ランクは像空間の次元であるので線形写像の核空間や像空間について調べるときに役立ちます。 ベクトル空間は次元が同じなら同型、すなわちベクトル空間として同じ構造を持っていると考えられます。線形写像のランクを調べることは、像空間の構造を調べることであり、その線形写像についての情報の一つを得ることになります。具体的なランクの使い方はこのページの後半に述べます。

rankの求め方

ある線形写像が与えられたとき、その線形写像の表現行列を求めればランクを計算することが出来ます。(はじめから行列で与えられていればこの部分は問題ないです。)

表現行列のランクはその行列が階段行列と呼ばれる形の行列なら簡単に求まります。 階段行列でない場合は基本変形を施すことによって必ず階段行列に帰着できます。

階段行列

階段行列とは $$\begin{pmatrix} 1 && 1 && 1 && 1\\ 0 && 1 && 1 && 1\\ 0 && 0 && 0 && 1 \end{pmatrix}$$ のように0でない成分が階段状に並んだ行列のことです。
(この例では1,2,4列目で階段の段が増えています。)

正確には階段行列とは、行列の1列目の成分は1行目以外全て0で、
2列目以降の全ての列ベクトルについて

  1. $0$でない成分のうち最も下の行は何行目かを調べる
  2. その列ベクトルよりも左側の全ての列について考え、0でない成分のうち最も下の行は何行目かを調べる
(i.で調べた行数)$\leq$(ii.で調べた行数)+1
がいえる行列のことです。

簡単に説明すると、階段行列とは1列目では段数は0または1で、それ以降の列では段数が増えないか、1段増えるかを繰り返す行列のことです。2段以上一気に増えてはいけません。

例題

問.次の行列は階段行列であるか。

$$\begin{pmatrix} 2 &&-1 && 3 && 0\\ 0 && 1 && 0 && 1\\ 0 && 0 && 0 && 2 \end{pmatrix}$$

答.階段行列である。

(4列目で2段増えているように見えるかもしれませんが、2列目から3列目にかけて段が増えていない、段の数は変わらないと考えます。)

詳しい解答を見たい方はここをクリック。

階段行列のときのrankの求め方

階段行列のときは階段の段数がそのままランクになります。日本語でランクのことを"階数"と呼ぶのはここに由来していると思われます。

例題

次の行列$A$のランクを求めなさい。

$$A=\begin{pmatrix} 2 &&-1 && 3 && 0\\ 0 && 1 && 0 && 1\\ 0 && 0 && 0 && 2 \end{pmatrix}$$

答.${\rm rank}\ A=3$.

1,2,4列目ででそれぞれ1段ずつ、合計3段増えているのでランクは3です。

階段行列でないときのrankの求め方

階段行列でないときは行基本変形という変形を繰り返すことで階段行列に帰着させます。

行基本変形とは以下の3つの変形のことをいいます。

  • 2つの行を入れ替える
  • 1つの行を$a$倍する($a\neq 0$)
  • 1つの行を$a$倍して他の行に足す($a$は全ての実数)
(この基本変形を列に対して行うことを列基本変形といいます。 ランクを求めるときは列基本変形も使って良いですが使わなくても階段行列にすることが出来ます。)

以下の例題で実際にランクを求めてみましょう。

例題

次の行列$A$のランクを求めなさい。

$$A=\begin{pmatrix} 0 && 1 && 2 && 1\\ 1 && 1 && 1 && 1\\ 1 && 3 && 1 && 2 \end{pmatrix}$$
答.ここをクリック

全射・単射との関係

ランクは像の次元であるので値域の次元と比べることで全射かどうか分かります。 さらに、次元公式($n-{\rm dim \ Ker}f={\rm rank}f$ ($n$は定義域の次元))より${\rm Ker}f$の次元も分かるので$f$が単射であるかも分かります。

すなわち、線形写像$f:\ \mathbb{R}^n\to \mathbb{R}^m$は $$fが全射\iff {\rm rank}f=m$$ $$fが単射\iff {\rm rank}f=n$$ となります。

※これを示すには、一般に部分空間$W_1,W_2\subset V$に対して $$(W_1 \subset W_2 かつ {\rm dim}W_1={\rm dim}W_2) \Rightarrow W_1=W_2$$ がいえるのでそれを使います。

※$m=n$のときは全射と単射は同値になります。また、$m\neq n$のときは全射と単射が同時に成り立つことはないことに注意してください。

例題

$$A=\begin{pmatrix} 2 &&-1 && 3 && 0\\ 0 && 1 && 0 && 1\\ 0 && 0 && 0 && 2 \end{pmatrix}$$ を左からかける写像$f_A:\mathbb{R}^4\to \mathbb{R}^3$は全射であるか、あるいは単射であるか。

答.ここをクリック

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