表現行列
数ベクトル空間のあいだの線形写像は(標準基底を用いて)行列で表すことができました。では、一般のベクトル空間のあいだの線形写像はどのように扱えば良いのでしょうか。 ベクトル空間の基底は同型写像により数ベクトル空間の標準基底と対応付けられました。実はこれを使うと一般のベクトル空間の間の線形写像も行列を使って表すことができるのです。
表現行列とは
前のページ(基底とは)により、基底を使うとベクトル空間 を と同じように扱うことができることが分かりました。ここで をベクトル空間として、線形写像 を考えます。今、基底を使うと と 、 と を一対一対応させることが出来ます。このとき、 と数ベクトル空間から数ベクトル空間への写像 を一対一対応させることが出来るのではないか、それが表現行列の考え方です。
表現行列の表し方
今、ベクトル空間 をそれぞれn次元、m次元とします。このとき、全単射な線形写像 と が存在します。
(
と
は全単射なので逆写像(矢印の向きを逆にした写像)が存在することに注意してください。)
ここで を考えるとこれは から への線形写像になっています。 よってこの写像は行列を使って表すことが出来ます。 その行列は線形写像fを表現しているものなのでfの表現行列と呼びます。
線形写像
の表現行列を
とし、
による写像を
とするとこのことは以下の図式で表せます。
このような図式でみると対応関係がよく把握できると思います。
また、表現行列は だけでなく、基底を与える写像である や によっていることに注意してください。
練習問題1
ベクトル空間
を実数係数の2次以下の多項式全体とする。
線形写像
を
とするとき、基底
に関する
の表現行列を求めよ。
練習問題2
線形写像
を
とするとき、基底
に関する
の表現行列を求めよ。
表現行列の素晴らしさアピール
行列は から への写像であり、すべて成分で計算できるので一般の線形写像をそのまま扱うよりずっと効率が良いです。 どんなベクトル空間の間の線形写像でもなんと簡単な実数の計算に帰着してしまう。そんな強力な手法が表現行列なのです!
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