部分空間の判定
ここでは、ある部分集合が部分空間であるかどうかを調べたいときにどのように調べればよいかを説明します。部分空間とは何かが知りたい方は "部分空間とは"を御覧ください。
(例題) 以下の の部分集合は部分空間か
(1)
(2)
(3)
まずは素直に調べてみる
ベクトル空間 の部分集合 は、以下の3つの条件を満たすとき部分空間であるといいます。
したがって、部分空間かどうかをチェックするには一つ目から順に条件を満たすかどうか調べていけばOKです。全ての条件を満たせばその部分集合は部分空間となり、一つでも条件を満たしていなければ、部分空間でないことになります。
(1)の解答
(1)
まず、一つ目の条件を調べます。
これは
を調べればよいです。
実際に、
として
より、
となります。
これで初めの条件が満たされることが分かりました。
次に、2つ目の条件を調べます。
とすると
を満たします。
ここで
を考えると、
より
となります。これで2番目の条件が満たされることが分かりました。
最後に、3つ目の条件を調べます。 とすると、 であるので が分かります。これで3つ目の条件が満たされることが分かりました。
以上より3つの条件が全て満たされるので は部分空間であるといえます。
(2)の解答
(2)
これは となっているので一つ目の条件を満たしません。よって は部分空間ではありません。
(ちなみに、この集合は2,3番目の条件も満たしていません。よってそれらのうちいずれかを示しても部分空間でないことがいえます。)
(3)の解答
(3)
ですが よって は2番目の条件を満たさないので部分空間ではありません。
(ちなみに、 は1と3の条件は満たします。確かめてみてください。)
図形的に部分空間を考える
今回の例題で扱った は中学や高校で扱ってきた、xy平面と対応付けて考えることができます。
実は、 の部分空間はxy平面では以下の3通りのいずれかになります。
- 原点のみの集合
- 原点を通る直線
- 全体
上から順番に0次元、1次元、2次元の部分空間となっています。
今回の例題に出てきた部分集合をxy平面で表すと以下のようになります。
今回の例題では だけが部分空間でしたが、これはちゃんと原点を通る直線になっています。
このように図形で考えると見た目で見当がつくのである集合が部分空間かどうかを考える際に役立ちます。この図を踏まえて例題をもう一度見なおしてみると部分空間でないときの示し方などイメージがついて理解の手助けになるかもしれません。
もっと簡単に判定する方法・裏ワザ
例題では条件を地道に調べていったわけですが、もっと簡単に判定する方法をご紹介します。
同次連立一次方程式の解空間は部分空間である
今回の例題では(1)
がこのパターンにあたります。
同次というのは方程式の次数が全て同じ、すなわち定数項がない連立一次方程式ということです。そのような連立方程式の解全体の集合は部分空間になります。
理由としては連立一次方程式は行列を用いて と書けるので のときは となり、行列Aを左から掛ける写像の核空間と考えられるからです。核空間は必ず部分空間になります。
ちなみに、 の部分集合の場合、この形に書けない場合は部分空間でないですが、"この形に書けない"ということを示すのは難しいので、書けなさそうだなと思った場合、3つの条件を調べて反例を示しにかかりましょう。
定数項のある連立一次方程式の解空間は部分空間でない
において のとき、すなわち定数項のある場合は部分空間になりません。このことはその部分集合にゼロベクトルが属さないことからすぐに分かります。
(2)
はこの定数項のあるパターンです。ゼロベクトルが属していません。
部分空間の和集合は部分空間でない
2つの部分空間 があったときにそれらの共通部分 は部分空間になりますが、和集合 は一般には部分空間になりません。
(3)
はこのパターンです。
と因数分解できるので、
は
"
または
"
と言い換えられます。したがって、
と置けば、
となります。ここで
をとれば
より、
は部分空間でないことが分かります。
ちなみに、 はそれぞれ部分空間となっているのでどちらか一方のみの集合内の元ではいくら計算しても反例は挙げられません。
(練習問題)以下の の部分集合は部分空間か
(1)
(2)
(3)